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【ホームズ】マスグレーヴ家の儀式書の翻訳の違い

ミステリ

今回は、私の非常にピンポイントな興味についての備忘録となっておりますので、ご了承ください。

(あ、いつものことか)

先日読ませていただいたブログで、私にしては珍しくつぶやきました。

映画の吹き替えが新しくなって、セリフも変わってしまってイメージが違う、という話題だったのですが、すごく共感しまして。

そして、これに関連して思い出したのが海外小説の翻訳の違いについて。

ホームズ翻訳の変遷

私がホームズ好きであることは何度も書いてきました。

ホームズの翻訳本は多くの出版社から出ていて訳者はそれぞれ違うので、読んだときの印象がずいぶん変わってくるんですよね。それでいろんな出版社の本を買いたくなってしまうのですが。

エピソードタイトルだけを見てみても、例えば「赤毛組合」「赤髪組合」「赤毛連盟」などと違いが。

私の頭の中では「赤毛連盟」で定着しています。

「白銀号事件」「シルヴァー・ブレイズ」「名馬シルヴァー・ブレイズ」……

いやいや「銀星号事件」でしょ、みたいな。

最初に覚えたタイトルへの思い入れが強くなってしまいますね。

タイトルだけでなく本文ならなおさら、翻訳された年代によってもかなり変わってきますし。

中でも特に気になってしまうのが「マスグレーヴ家の儀式」

ホームズの大学時代の友人マスグレーヴの家に代々伝わる儀式書の謎を解くストーリー。

で、最初に載せたTwitterで「呪文は古めかしい言い回しのほうがいいよね」って言ったのと同じ理由で、古文書であるマスグレーヴ家の儀式書の文言も古臭いほうが良いと思っているのですが……。

では私の手元にある各出版社の翻訳本で、儀式書の冒頭部分を見比べてみましょう。

 

新潮文庫 訳:延原謙(1953年)

初めて買い揃えたホームズ本。翻訳がかなり年季がはいっていて言葉遣いが難しかったりするけど、それが格調高い雰囲気となっていて良い。

そは何人(なんびと)のものたりしや?

ゆきたる人のものなり。

そは何人(なんびと)のものたるべきや?

来(きた)るべき人のものなり。

これですよ、イメージは。古風な文章でなくてはね。問答のリズムもいいカンジ。

講談社スーパー文庫(1986) 訳:鮎川信夫(1973年 講談社文庫より)

ホームズ物語全60編のうち長編『恐怖の谷』と短編集『シャーロック・ホームズの事件簿』を除く47編が一冊にまとめられた大型本。

そは何人のものなりしか?

去り行きし人のものなり。

何人のものになるべきか?

きたるべき人のものに。

これも及第点。

ちくま文庫(1997) 訳:小池滋(1982年 東京図書より)

解説が満載の特殊な編集になっている文庫。

そは誰のものなりしや?

去りし人のものなりき。

誰のものにすべきや?

来るべき人のものに。

惜しい。“誰”では雰囲気でないなぁ。

河出書房新社ハードカバー 訳:小林司、東山あかね(1998年)

決定版と銘打たれた全集。解説も充実していて興味深い。初版当時のイラスト満載!

それは、誰のものだったのか

それは、行ってしまった人のもの

それは、誰のものになるべきか

これから来る人のものに

ああぁ、やっちゃった…。解りやすく現代語に直してしまった。残念無念。

光文社文庫 訳:日暮雅通(2006年)

新しい翻訳でとても読みやすい。

それはだれのものであったか?

去りし人のものなり。

それを得るべきものはだれか?

やがて来る人なり。

現代文と古文が混じってしまった。ちょい残念。

創元推理文庫 訳:阿部知二(1960)

昨年Kindleで買い揃えた旧訳版。

そは何びとのものなりしや。

去りにし人のものなり。

そを得るは何びとなりや。

やがて来(こ)ん人なり。

やはり古い翻訳は雰囲気がいいですね。

創元推理文庫【新訳】 訳:深町眞理子(2010)

最新の翻訳ではあるが適度に格調高く、かつ読みやすい。

そは何人のものなりしや。

去りにしひとのものなり。

そを得るは何人なりや。

やがてくるひとなり。

この部分だけを見ると旧版とほとんど同じだが、後半は違っている。

新訳だけど、古文は古文らしく訳されているので好感が持てますね。

 

ついでにジェレミー・ブレット主演のドラマの場合も見てみます。

英国グラナダTV版ドラマ(1985)

DVD字幕(2001年DVD-BOX)

「そは 何人(なんびと)の物なりや?」

“去りにし人”

「そを得るは?」

“やがて来る人”

DVD吹替(2001年DVD-BOX)

「誰(た)が物なりしか?」

“去りしに人の物”

「誰(た)が物たるべきか?」

“来るべき人”

なんと! 字幕と吹替が全然違いました。

でも、それぞれテンポが良くて古風でとても好みですね。

 

やはり、時代の雰囲気が感じられる翻訳が良いですねぇ。

このこだわり、お解りいただけるでしょうか?

ドラマを観ていて原作との違いに注目するのも面白いんですよね!

マスグレーヴ家のロケに使われた館の都合か、儀式書に出てくる数値が変更されてたりするんですよ。

今日は文章を引用するだけのつもりが、ついつい読みふけってしまって1日つぶしてしまった。

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